東京農工大学大学院工学研究院の鈴木健仁准教授の研究グループは,SIJ技術を使い,テラヘルツ電磁波に対して高屈折率でありながら無反射である人工構造材料を実現しました。これは,25.3ミクロン×8.9ミクロンの微小な金属ワイヤ対80,036ペアを銀ペーストインクを使って数時間でポリイミドフィルムの両面に直接印刷したもので,周波数3テラヘルツにおいて屈折率5.9かつ反射率1.3%を示すことが確認されました。将来的には,従来の厚みのあるレンズなどに代わり,情報通信やイメージング用の部品への応用が期待されます。この成果は2021年4月28日にOptics Express (doi: 10.1364/OE.420827)に掲載されました。
名古屋大学大学院工学研究科の関隆広教授の研究グループは,SIJ技術を使い,高分子膜上に微細な溝を作る新たな表面加工手法を開発しました。この方法では,まず溝を作りたい部分にSIJで特殊なインクを微細描画します。つぎに膜全体に紫外光を当てます。すると,マランゴニ効果により,描画した部分において自発的な膜物質移動が起き,幅約100ミクロンの溝が発生しました。新しく発見されたこの手法は現像工程が不要なため,より簡便にミクロンスケールの流路を作製する技術への応用が期待されます。成果は2019年2月22日発行のScientific Reports (doi: 10.1038/s41598-019-38709-1)に掲載されました。
シュトゥットガルト大学ITO & SCoPE研究センターのHerkommer教授の研究グループは,遮光インクを塗布することでマイクロレンズの高性能化を実現しました。この成果は2018年11月1日発行のOptics Letters(doi:10.1364/OL.43.005283)に掲載されました。
3D技術を使うとマイクロ光学部品を作製することができます。しかしその材料は透明であるため,側面から入射してくる迷光や散乱光によって像のコントラストが低下するという問題がありました。また3D印刷では開口部を直接形成できませんでした。そこで,SIJ技術をマイクロディスペンサーとして用い,あらかじめ作りこまれた流路に銀インクを注入することでマイクロレンズの遮光部と開口部を作製しました。その結果,像のコントラストが向上しました。また,レンズ1枚でマイクロテレセントリックレンズを実現することができました。これは,マイクロ光学システムの実現への道を開く成果であり,また銀インク塗布によるマイクロ反射光学系作製の可能性も示されました。
ケンブリッジ大学 キャベンディッシュ研究所の H. Sirringhaus 教授のグループは、有機材料を塗布するだけで、 チューニング可能かつ高性能なナノフォトニック共振器を作製することに成功しました。 この研究成果は、2017年10月24日発行の Advanced Materials (doi:10.1002/adma.201704425) に掲載されました。 Sirringhaus 教授のグループは、フェムトリットルインクジェット技術を使って2次元フォトニック結晶テンプレート上に有機光学材料を印刷し、線やドット、交差線を作製することで、高い特性をもつナノフォトニック共振器を再現性よく作製しました。このボトムアップ技術の大きな特長として、塗布回数を調整することにより共振器の厚さを10nm以下のレベルで精密にチューニングできることが挙げられます。研究では、2本の線を近接描画してフォトニック分子を作製し、線間隔をサブミクロン精度で変えることにより、そのカップリング強度を簡単に制御できることも示されました。
【SIJの技術のポイント】
フェムトリットル吐出技術を用いることで、共振器サイズの精密制御が可能。
100nmの分解能をもつ描画機構によって、サブミクロン精度で塗布位置を決定できる。
名古屋大学大学院工学研究科の関隆広教授、福原慶博士後期課程大学院生、永野修作准教授、原光生助教のグループは、新たな液晶材料の光配向手法を開発しました。この研究成果は、2014年2月18日発行の、英国の科学雑誌で Nature Communications誌(電子版)に掲載されました。関教授のグループでは、液晶物質の膜と空気の界面に配向能を持つスキン層を設けて、液晶材料を配向させる新技術を開発しました。空気界面に形成されるスキン層は偏光照射によって配向させる能力を持ち、これを利用して液晶分子を自由な方向に配向させ、書き換えることができます。 今回提案の手法は、高分子液晶材料に少量の光配向能をもつブロック共重合体を混ぜ、これを熱処理するだけで空気側にこのスキン層を偏析させます。また、インクジェットプリンターを用いれば空気側に膜を描画して、光配向をさせることもできます。超微量塗布が可能なスーパーインクジェット装置を用いてブロック共重合体を直接描画しました。 熱処理や偏光照射を行わなければ、印刷しても描画パターンは浮き出ないため、描画は潜像としての役割になります。必要な時にだけ光照射することで像が浮かび上がることと、書き換えも可能であることから、液晶材料を偽造防止システムに利用するなど新たな用途に適応される可能性があります。
【SIJの技術のポイント】
フェムトリットルの超微量吐出は、インクに含まれる溶媒による印刷対象の樹脂層へのダメージを軽減できる。
インクジェットヘッドの耐薬品性が高く、様々な有機溶媒を使用することができる。
国立大学神戸大学 自然科学系先端融合研究環遺伝子実験センター 今石 浩正教授、森垣 憲一准教授、山田美紗登氏の論文がLangmuir誌に掲載されました。-技術課題とその解決策- 固体基板表面に人工生体膜を集積化するためには、膜成分をデザインされた部位に固定化する必要があるが、脂質膜とタンパク質からなる膜構造は疎水性が高く、空気中で不安定化するため、インクジェット塗布技術での固定化は困難であった。この技術課題を解決するため、本研究ではポリマー化された脂質二分子膜を安定な枠組みとして用い、区画内にアガロース・トレハロースを含んだ水溶液を塗布してから脂質膜を塗布する二段階塗布法を用いることで、生体膜成分を基板表面に塗布して固定化することに成功した。
【SIJの技術のポイント】
違う種類の液が充填されたインクジェットヘッドを装置内に多数セット。
プログラムにより指定された液が入ったインクジェットヘッドをピックアップし所定の箇所に塗布できる。
株式会社SIJテクノロジと、国立大学法人大阪大学産業科学研究所の竹谷純一教授および岡本敏宏准教授は、有機トランジスタの性能を大きく左右する有機半導体薄膜の結晶性を向上させる、超微細インクジェット(スーパーインクジェット:SIJ)を使った高性能有機半導体薄膜の塗布技術の開発に成功しました。
2013年1月29日プレスリリース
大阪大学が開発した結晶性有機半導体材料をSIJテクノロジの超微細インクジェットで塗布する事で、結晶の方位がそろった高品質な有機半導体結晶薄膜を高速形成
● 形成された有機半導体結晶薄膜上に有機トランジスタ構造を作成
● 結晶性を高めるための熱処理を行う事無く、3.8Vcm2/Vsの高移動度を実現
● 開発技術は局所的に結晶方位を制御した微細塗布が可能
ナノ粒子製造技術、極低酸素技術、超微細インクジェット技術の要素技術を統合し、半導体製造プロセスの中でも小型化と微細化が要求されるICパッケージ基板を対象とした銅の微細配線技術を確立を目指す。本研究開発の成果であるシングルミクロンの銅配線は、2018年頃に世界標準の配線ルールとして用いられることが予測されており、先端的な情報家電の分野に対して大きく寄与することが期待できる。
【インクジェット方式による低抵抗な超微細銅配線の達成】
2013年10月28日プレスリリース
ナノ粒子製造技術により、インクジェット方式に適した銅インクを開発
● 超微細インクジェット技術により、線幅3μmの銅配線を直接描画
● 極低酸素還元技術を進化させ、銅の配線抵抗率4μΩ・cmを達成
カメラ/顕微鏡/内視鏡などの光学機器製品には、不必要な光を遮るマスク(遮光膜)がレンズに形成されており、その製造方法としてフォトリソグラフィ技術が広く用いられている。本開発では、超微細インクジェット技術を用いてマスク形成技術を確立することにより、部品点数の削減、光学性能の向上などが見込まれ、既存のフォトリソグラフィ技術よりも低価格、高品質なマスク加工サービスとして事業化する。
ケンブリッジ大学 キャベンディッシュ研究所の H. Sirringhaus 教授のグループは、有機材料を塗布するだけで、 チューニング可能かつ高性能なナノフォトニック共振器を作製することに成功しました。 この研究成果は、2017年10月24日発行の Advanced Materials (doi:10.1002/adma.201704425) に掲載されました。 Sirringhaus 教授のグループは、フェムトリットルインクジェット技術を使って2次元フォトニック結晶テンプレート上に有機光学材料を印刷し、線やドット、交差線を作製することで、高い特性をもつナノフォトニック共振器を再現性よく作製しました。このボトムアップ技術の大きな特長として、塗布回数を調整することにより共振器の厚さを10nm以下のレベルで精密にチューニングできることが挙げられます。研究では、2本の線を近接描画してフォトニック分子を作製し、線間隔をサブミクロン精度で変えることにより、そのカップリング強度を簡単に制御できることも示されました。
【SIJの技術のポイント】
フェムトリットル吐出技術を用いることで、共振器サイズの精密制御が可能。
100nmの分解能をもつ描画機構によって、サブミクロン精度で塗布位置を決定できる。
サブフェムトリットルインクジェットを用いて、フレキシブル基板上に低電圧で駆動(3V以下)できる微細CMOSを作製した(図1)。(略) 試作された有機トランジスタのソースドレインを構成する銀電極の線幅は2μm、チャネル長は1μmである(図2)。リソグラフィー技術を用いることなく、印刷で作製したトップコンタクト型の有機トランジスタとしては世界最小である。次世代ディスプレイで求められる高速応答、低電圧駆動、低コストを同時に実現できる有機トランジスタ技術として期待される。(略) サブフェムトリットルインクジェットにより作製したソースドレイン電極を有するトランジスタの特性は、蒸着法により作製したソースドレイン電極を有するトランジスタの特性と差異がないことが確認できた。